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神戸地方裁判所 平成5年(ワ)835号 判決

原告

藤橋希美子

被告

有限会社旭運輸倉庫

主文

一  被告は、原告に対し、金九二〇万八三八三円及びこれに対する平成三年八月二六日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを一〇分し、その三を原告の、その七を被告の各負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実

以下、「被告有限会社旭運輸倉庫」を「被告」と、「訴外川田正志」を「川田」と略称する。

第一当事者が求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は、原告に対し、金一三四四万六九六四円及びこれに対する平成三年八月二六日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は、被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は、原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  本件事故の発生

次の交通事故(以下「本件事故」という。)が発生した。

(一) 日時 平成三年八月二六日午後五時三〇分頃

(二) 場所 三木市志染町吉田二五六番地先路上

(三) 加害(被告)車 被告保有。川田運転の普通貨物自動車

(四) 被害(原告)車 原告運転の原動機付自転車

(五) 態様 原告車の後方から進行してきた被告車が、本件事故現場で原告車を追い抜く際、対向車を避けようとして左側に寄つたため、原告車の側面に接触し、同車両を転倒させた。

2  被告の責任

被告会社は、本件事故当時被告車の保有者であつたから、自賠法三条により本件損害賠償責任を負う。

3  原告の受傷内容とその治療経過及び後遺障害の存在

(一) 原告の本件受傷内容

頭部外傷、頸部捻挫、右第三中手骨々頭骨折、右第四中手骨々頭粉砕骨折(開放性)、右環指伸筋腱引き抜き損傷、右手中環小指梢神経損傷、右股部右前腕肘部右手背部挫創。

(二) 治療経過

原告は、服部病院に平成三年八月二六日から同年九月二九日まで入院し(三五日間)、同月三〇日から平成四年一二月二一日まで通院した(実治療日数六七日)。また、その間平成三年一一月八日から平成四年一二月一九日まで西明石クリニツクに通院した(実治療日数四六日)。

(三) 後遺障害の存在

原告の本件受傷は、平成四年一二月二一日に症状固定し(当時満五四歳)、右中指にしびれ、右環指の知覚低下、運動時に同指の著しい疼痛、右握力低下、局部の著しい神経症状(障害等級一二級一二号該当)、右環指中手骨頭の変形、右手指屈曲拘縮、右手中指環指の著しい機能障害(障害等級一二級九号該当)、右手背部における醜状痕の存(障害等級には該当しない。)。

4  原告の損害

(一) 治療費 金二二八万一一四五円

(二) 入院雑費 金五万二五〇〇円

入院期間三五日間につき、一日当たり金一五〇〇円の割合。

(三) 装具代 金三万四六七三円

(四) 医師謝礼金 金五万円

(五) 通院交通費 金一六万二五〇〇円

(六) 休業損害 金四一八万二七八〇円

原告は、訴外東洋物産工業株式会社に裁断工として勤務するかたわら主婦としての業務に従事し、本件事故当日の平成三年八月二六日から前記症状固定日の平成四年一二月二一日までの合計四八三日間休業を要したところ、原告の平成二年度年収は金二一二万九八四七円であつたが、同人の本件休業損害には、同人の家事労働に対する対価も含めてその損害を算定すべきである。したがつて、同人の同損害の算定に当たつては、平成三年の賃金センサスによる同年齢の女子の平均賃金を基準とすべきであるところ、同年額は、金三一六万〇九〇〇円である。

そこで、右金額を基礎に右休業損害を算定すると、金四一八万二七八〇円になる。

(七) 後遺障害による逸失利益 金六二〇万円

原告は、前記症状固定当時満五四歳であつたが、前記後遺障害のため、今後就労可能な満六七歳までの間の一三年間について、その労働能力の二〇パーセントを喪失するに至つた。

そして、前記賃金センサスによる満五四歳の女子平均賃金を基礎とし、ホフマン計算方式にしたがい中間利息を控除して、前記後遺障害による逸失利益の現価額を算定すると、金六二〇万円となる(ホフマン係数は九・八二一)。

316万0900円×0.2×9.821≒620万0000円

(八) 慰謝料 金四八〇万円

(1) 本件入通院分 金一八〇万円

(2) 本件後遺障害分 金三〇〇万円

なお、後遺障害等級に該当しない醜状痕でも、女性の場合には慰謝料において考慮すべきである。

(九) 弁護士費用 金一〇〇万円

(一〇) 本件損害の合計額 金一八七六万三五九八円

5  損害の填補

原告は、本件事故による前記損害につき、治療費金二二八万一一四五円、通院費金一六万二五〇〇円、装具代金三万四六七三円、医師謝礼金金五万円及び休業損害の内金として金二七八万八三一六円の各支払いを受け、その合計額は、金五三一万六六三四円となるが、これを本件損害合計額金一八七六万三五九八円から差し引くと、原告のその後における本件損害額は、金一三四四万六九六四円となる。

6  よつて、原告は、被告に対し、本件損害賠償として、金一三四四万六九六四円及びこれに対する本件事故発生日である平成三年八月二六日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

二  請求原因に対する答弁

1  請求原因1(本件事故の発生)の事実は認める。

2  同2(被告の責任)は認める。

3  同3(一)、(二)(原告の受傷内容とその治療経過)の各事実は認める。同(三)のうち原告に障害等級一二級九号該当の後遺障害が存在することは認めるが、その余の事実は争う。

4  同4のうち、(一)、(三)、(四)及び(五)は認める。(二)は知らない。(六)のうち、原告の平成二年度における年収が、金二一二万九八四七円であつたことは認め、その余は知らない。(七)ないし(九)は争う。(一〇)は知らない。

5  同5(損害の填補)の事実は認める。

三  抗弁(過失相殺)

原告は、本件T字型交差点において、南側分岐道路から本件事故現場道路(以下、本件道路という。)へ左折するに当たり、原告車を一旦停止させるとともに自車前方右側を確認すべき注意義務があつたのに、これを怠り、漫然と自車を左折させた。

折から、川田は、被告車を運転し本件道路を直進していたが、自車前方約一五メートルの地点付近に、左折進行した原告車を認め、同車両との接触もしくは衝突等回避のため自車を本件道路センターライン側へ右寄りした。

ところが、丁度その時対向車が直進して来たため、川田は、同対向車との衝突を回避すべく被告車のハンドルを左寄りに切つたところ、原告車と不可避的に接触し、本件事故が発生した。

したがつて、本件事故の発生には、原告の右過失も寄与しており、同人の同過失は、同人の本件損害額の算定に当たつてこれを相当程度斟酌し、過失相殺がなされるべきである。

四  抗弁に対する答弁

本件事故の発生は認めるが、その余の主張事実及びその主張は争う。

五  証拠

本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一1  請求原因1(本件事故の発生)、同2(被告の責任)、同3(原告の受傷内容及び治療経過)の各事実、原告に障害等級一二級九号該当の後遺障害が存在することは、当事者間に争いがない。

2  当事者間に争いのない右各事実に基づくと、被告には、自賠法三条により、原告が本件事故により被つた後記損害を賠償する責任があるというべきである。

二1  原告は、前記当事者間に争いのない後遺障害以外の後遺障害(障害等級一二級一二号該当)の存在をも主張している。

そこで、右主張事実につき判断する。

2(一)  原告本人尋問の結果によりその存在及び成立が認められる甲第七号証、神戸弁護士会長作成部分の成立については争いがなく、その余の部分については弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第一一号証、原告本人尋問の結果により訴外植田雅人が平成五年五月一一日原告の右手を撮影した写真であることが認められる検甲第二、第三号証、原告本人の右供述及び弁論の全趣旨を総合すると、次の各事実が認められ、その認定を覆えすに足りる証拠はない。

(1)(イ) 原告には、本件症状固定時、右環指の知覚低下、運動時に同指の著しい疼痛、右握力低下(一〇キログラム)が存在し、かつ、同著しい疼痛が将来悪化する可能性も存在した。

(ロ) しかして、右疼痛の悪化可能性の医学的根拠は、変形治癒による関節面の不適合性が、将来疼痛増悪の原因となり得ることにある。

(2) 原告には、現在なお右環指の著しい疼痛が存在し、これと右中指のしびれと合まつて、同人において右手を握り締めることが不可能であり、握力低下の状態も続いている。そして、同人の右疼痛は、冬期、右腕全体に拡大されている。

同人は、同人の右症状から、日常生活上包丁が使えない等物を握つて行う細い作業ができず、主婦としての家事処理に支障を来たしている。

(二)  ところで、本件後遺障害は、本件損害賠償訴訟において同後遺障害による逸失利益や慰謝料算定の基礎をなすものであり、したがつて、それは、損害賠償法の法理にしたがつて律されるというべきである。

このような観点からすれば、同後遺障害の存在及びその程度は、これをただ生理・解剖学的に判断して行う器質的障害評価のみではなく、この器質的障害評価に社会的・経済的要因をも導入し、両者を総合して行う機能的障害評価によるのが相当である。

そこで、原告の本件後遺障害に関する前記認定各事実を右機能的障害評価に照らし検討すると、同人には、同後遺障害の内容として、当事者間に争いのない前記後遺障害の外に、その主張にかかる後遺障害の存在(局部に頑固な神経症状を残すもの。障害等級一二級一二号該当。)を肯認するのが相当である。

(三)  よつて、原告の右主張は、理由がある。

3  右認定説示を総合すると、原告の本件後遺障害の内容には、当事者間に争いのない前記障害に加えて右認定にかかる障害も存在し、その程度は、全体として障害等級一一級相当と認めるのが相当である。

三  同4(原告の損害)について

1  治療費 金二二八万〇八一八円

原告が本件治療費として金二二八万〇八一八円を支出したことは、当事者間に争いがない。

2  入院雑費 金四万五五〇〇円

(一)  原告が、服部病院に三五日間入院したことは、当事者間に争いがない。

(二)  そこで、本件事故と相当因果関係に立つ損害(以下、本件損害という。)としての入院雑費は、右入院期間三五日間につき、一日当たり金一三〇〇円の割合による合計金四万五五〇〇円と認めるのが相当である。

3  装具代 金三万四六七三円

原告が本件装具代金三万四六七三円を支出したことは、当事者間に争いがない。

4  医師謝礼金 金五万円

原告が本件医師謝礼金金五万円を支出したことは、当事者間に争いがない。

5  交通費 金一六万二五〇〇円

原告が本件通院交通費金一六万二五〇〇円を支出したことは、当事者間に争いがない。

6  休業損害 金四一八万二七八〇円

(一)  原告の本件治療期間が本件事故当日である平成三年八月二六日から症状固定日である平成四年一二月二一日まで(四八三日間)であること、同人の平成二年度の年収が金二一二万九八四七円であつたことは、当事者間に争いがない。

(二)  成立に争いのない甲第九号証の二、原告本人尋問の結果により真正に成立したと認められる甲第八号証、原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、原告は、本件事故当時五三歳(昭和一三年一月五日生)の健康な女子であり、同事故当時、訴外東洋物産工業株式会社に裁断工として勤務するかたわら主婦として家事処理に従事していたこと、同人が同会社から得ていた給与は平成二年度分が金二一二万九八四七円であつたこと、同人は、右治療期間中同会社を欠勤し、したがつて、同給与の支給を受け得なかつたこと、また、同人は同治療期間中家事処理もなし得なかつたことが認められ、この認定を覆えすに足りる証拠はない。

(三)  右認定各事実に基づけば、原告は、本件事故当時、いわゆる兼業主婦であつたところ、本件受傷により休業損害を受けたと認めるのが相当である。

しかして、このような場合、右休業損害算定の基礎収入は、右実収入と賃金センサスによる平均額とを比較し、その高額の方を基準にするのが相当である。

そこで、右平均額を求めると、平成三年賃金センサス第一巻第一表産業計・企業規模計・学歴計女子労働者五〇歳~五四歳によると、その平均年額は、金三一六万〇九〇〇円であることが認められ、同認定によれば、本件においては、原告の右実収入により同平均額の方が高額であることが明らかである。

よつて、原告の本件休業損害算定の基礎収入は、右説示にしたがい、右平均額である年額金三一六万〇九〇〇円とすべきである。

(四)  右認定各事実を基礎として、原告の本件損害としての休業損害を算定すると、金四一八万二七八〇円となる。

7  後遺障害による逸失利益 金六二〇万円

(一)  原告の本件受傷が平成四年一二月二一日症状固定したことは、当事者間に争いがなく、同人が本件事故前健康な女子であつたこと、同人が右症状固定当時満五四歳であつたこと、同人の本件後遺障害の内容及びその程度、同人の右時点における収入(年収)が金三一六万〇九〇〇円と認め得ることは、前記認定のとおりである。

(二)(1)  原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨を総合すると、原告は、本件後遺障害のため、本件事故当時在籍していた前記会社も、従事していた裁断の仕事を続行することができず退職せざるを得なかつたこと、同人は現在、家事処理の質や量においても、本件事故前に比較しはるかに劣ることしかできず、特に、力を要する仕事に支障を来たしていることが認められ、その認定を覆すに足りる証拠はない。

(2)  右認定各事実に基づけば、

(イ) 原告は、本件後遺障害のためその労働能力を喪失し、現在、経済的損失、すなわち実損を受けていると認められる。

(ロ) しかして、同人の労働能力喪失率は、右認定各事実を主とし、これにいわゆる労働能力喪失率表を参酌して、二〇パーセントと、同人の就労可能年数は、一三年と認めるのが相当である。

(三)  右説示認定を基礎として、原告の本件後遺障害に基づく逸失利益の現価額をホフマン式計算方法により中間利息を控除して算出すると、同人が主張する範囲内の金六二〇万円となる(ホフマン係数は九・八二一)。

316万0900円×0.2×9.821≒620万8640円

8  慰謝料 金四二〇万円

前記認定にかかる本件全事実関係に基づくと、原告の本件慰謝料は、金四二〇万円と認めるのが相当である。

9  原告の本件損害の合計額 金一七一五万六二七一円

四  被告の抗弁(過失相殺)

1  本件事故の発生は、当事者間に争いがない。

2  成立に争いのない甲第一〇号証、原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められ、この認定を覆すに足りる証拠はない。

(一)  本件道路は東西に走り、車道はセンターライン(追い越しのための右側はみ出し禁止の黄色のもの)によつて二車線に区分され、幅員は南側二・六五メートル、北側二・七五メートルであり、同車道の北側には幅員二・四メートルの歩道が存在する。

また、本件事故現場の東方約一四・四メートルの地点付近には、本件道路から南方へ分岐する道路(車道の幅員三・七メートル、車線の区別はない。以下、本件分岐道路という。)が存在し、本件道路と同分岐道路の接合地点付近には、同分岐道路から本件道路へ進入する車両のため、一時停止の標識が設置されている。

本件現場付近の制限最高速度は時速四〇キロメートル、現場付近は、直線で、見通しがよく、本件事故当日の天候は晴、道路面は乾燥していた。

(二)(1)  原告は、本件事故直前、原告車を運転して本件分岐道路を北進し、前記一時停止の標識付近まで至つたが、本件道路へ進入左折する前に、同標識にしたがい、自車を一旦停止させ、左右の交通状況を確認した。

同人は、その際、自車右方(東方)に西進する被告車を認めたが、同車両と原告車との距離から先に本件道路に進入左折して進行し得るものと判断し被告車の動向を十分見極めないまま原告車を発進させ、同道路へ進入して左折西進を始めた。

ところが、同人は、同左折後約八メートル進行した地点付近で、原告車のバツクミラーにより後方を確認したところ、被告車が相当の高速と轟音で原告車に接近して来るのに気付き、接触される危険を感じて先行避難しようと自車に加速したとたん、被告車と接触して本件事故が発生した。

(2)  一方、川田は、本件事故直前、被告車を運転して本件道路を西進していたところ、本件分岐道路の東方約三六・一メートル地点付近に至つた時自車左前方の同分岐道路上に原告車を認め、クラクシヨンを鳴らし、そのままの速度で進行し、原告車の右側を通過しようとした。

しかし、川田は、その際、自車前方約二九メートルの地点付近に、対向車を認め、同車両との衝突を避けようと被告車の進路を左側に変更したが、約二二・七メートル進行した地点付近で、今度は原告車との接触の危険を感じ、自車のハンドルを右に切り、急ブレーキを掛けたが間に合わず、被告車の左側面部を原告車の右側に接触させ、その衝撃の結果、原告は原告車ともども路上に転倒し、本件事故が発生した。

なお、被告車の本件事故時の速度は、前記認定事実のほか同車両のスリツプ痕が本件事故発生地点の西方約九・九メートルの地点付近から始まり、長さ二〇・七メートルであることから、少くとも時速五五キロメートルであつたと推認するのが相当である。

(三)(1)  右認定事実を総合すると、本件事故の発生には、原告の左折時における自車右方の安全確認義務違反の過失も寄与しているというべく、したがつて、同人の同過失は、同人の本件損害額の算定に当たり斟酌するのが相当である。

(2)  しかして、右斟酌する原告の右過失割合は、前記認定の本件事実関係に基づき、全体に対し二〇パーセントと認めるのが相当である。

(3)  そこで、原告の前記認定にかかる本件損害金一七一五万六二七一円を右過失割合でいわゆる過失相殺すると、その後において原告が被告に請求し得る同損害額は、金一三七二万五〇一七円となる(円未満四捨五入。)。

五  損害の填補 金五三一万六六三四円

原告が、本件事故後、同人の本件損害について、その填補として金五三一万六六三四円の支払を受けたことは、当事者間において争いがない。

そこで、右受領金員を前記認定の本件損害金金一三七二万五〇一七円から控除すると、その後に原告が被告に対し請求し得る損害額は、金八四〇万八三八三円となる。

六  弁護士費用 金八〇万円

本件事案の難易度、本件訴訟の審理経過及び前記認容額等を総合すると、本件損害としての弁護士費用は、金八〇万円と認めるのが相当である。

七  結論

以上の次第で、原告は、被告に対し、本件損害合計金九二〇万八三八三円及びこれに対する本件事故発生日であることが当事者間に争いのない平成三年八月二六日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める権利を有するというべきである。

よつて、原告の本訴請求は、右認定の限度で理由があるから、その範囲内でこれを認容し、その余は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条本文を、仮執行の宣言につき同法一九六条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 鳥飼英助)

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